師走のバタバタしている中、今日小さな映画館で1本の映画を鑑賞して参りました。
『シーモアさんと、大人のための人生入門』。
元コンサートピアニストとして活躍して現在は89歳のシーモア先生。
彼のレッスンはピアノ教育に留まらず、人間が生きていくという事への教えに通じており、言葉一つ一つが心に染み入りました。
その中で「衝突も喜びも調和(ハーモニー)も不協和音もある。それが人生だ。避けて通れない。音楽も同じで、不協和音もハーモニーも解決(レゾリューション)もある。解決の素晴らしさを知るには、不協和音がなくては。不協和音がなかったらどうか? 和解の意味を知ることもない。」という言葉がありました。
これには本当に目からウロコです。
一つの流れが紆余曲折を経て解決している事を譜面から読み取る事が出来ず、全くスルーして演奏してしまう事が起こりがちです。
まるで自分が幸せである事に気づいていないかのように。。。
それはとてももったいない事で、音楽においても『生きる』という事においても楽しみ、愛おしみ、味わう事が100パーセントできていない事なのだなぁと実感いたしました。
特にサロンコースの生徒さんのレッスンではハノンと同様にスケールも全調弾いて頂いている理由はここにあります。
スケールの最後のカデンツはシンプルな終止形ですが、その調に終止した、解決した、という響きを耳と体に入れ込んでもらえたら、と考えているからです。
映画の最後はシーモア先生の33年ぶりの演奏会。
そこで演奏されたBrahmsのop118-2。
私が死んだ後からもずっと弾き続けていきたいと思っているピアノ曲のひとつで、心にスーッと入っていくその優しく美しい音色。
シーモア先生の言う通り『自分の心と向き合うこと、シンプルに生きること、成功したい気持ちを手放すこと。積み重ねることで、人生は充実(する)』した人にしか出せないピアノだと、もう少しで涙がこぼれそうでした。
東京都渋谷区にて
Comments